前妻の子の法定分2,000万円。借金せずに家を守る対策4選
再婚した父が60歳で急逝。後妻と前妻の子(35歳・面識ゼロ)が相続人となり、前妻の子は法定相続分の2,000万円を1円も妥協せず主張。後妻はマンション3,000万円を守るため、預貯金1,000万円全額と銀行借入1,000万円で前妻の子に支払い。家は守ったが、60歳から1,000万円の借金返済と老後資金ゼロという最悪の状態に。
後妻の最終収支は+1,650万円(マンション3,000万 - 借金1,000万 - 弁護士費用150万 - 借金30年の利息相当200万)。前妻の子は2,000万 - 弁護士費用100万 = 1,900万を取得。後妻は60歳で家計が破綻寸前、生活費は年金だけでカツカツに。
もし父が生前に 公正証書遺言+配偶者居住権の指定+事前の家族開示 という3つの対策をしていれば、結末は大きく変わっていました。後妻はマンションに住み続けつつ、預貯金の半分も受け取れ、前妻の子も遺留分を確保しながら所有権という形でマンションの将来価値を継承できたはずです。
後妻の最終収支は+2,485万円相当(配偶者居住権2,000万 + 預貯金500万 - 対策費用15万)。借金もなく老後の不安も大幅軽減。実際との差額は、後妻+835万円。生前対策費用はわずか15万円。15万円の遺言で借金1,000万円と老後不安を回避できたはずだったのです。
「再婚した夫が亡くなった瞬間、会ったこともない『前妻の子』が現れた」──これは再婚家庭に潜む、最も厳しい相続トラブルの一つです。日本の離婚率は35%程度、再婚率は男性で20%程度。再婚家庭は決して珍しくないにもかかわらず、生前対策ができている家庭はごく僅かです。
この記事では、60歳の夫を急逝で失った後妻が、面識のない35歳の前妻の子から法定相続分2,000万円を要求された件を取り上げます。なぜこのような結末になったのか、どうすれば防げたのかを、公開情報や2020年から始まった配偶者居住権制度をもとに徹底的に解説します。
この記事は以下のような方に読んでいただきたい内容です。
- 再婚した家庭で、配偶者の前の家庭に子がいる方
- 夫(妻)にもしものことがあったとき、家を失わずに済むか不安な後妻・後夫
- 面識のない兄弟・姉妹がいる前妻の子・前夫の子
- 配偶者居住権の活用を検討している方
- 遺留分を考慮した遺言書を作成したい方
概要 ── 60歳で急逝した夫、面識のない前妻の子が相続人として現れる
先生、今日は再婚家庭のケースですね。「前妻の子」って、再婚後の家族にとっては本当に難しい問題だと聞きます。
そうなんです。今回は、夫が急逝したことで、後妻と面識のない前妻の子が初めて相続人として顔を合わせることになったケースです。日本の離婚率・再婚率を考えると、これは決して珍しくない状況です。
相談者は東京都在住の60歳・Yさん。10年前に再婚した夫が60歳で急逝し、突然「前妻の子からの法定分請求」に直面しました。
Yさんの家族構成を見てみましょう。
- 後妻・Yさん(60歳・相談者):東京都在住。再婚後10年。子はなし。パート勤務。再婚時に自分の貯金を全て夫との生活に注ぎ込んだ。
- 前妻の子・Rさん(35歳):関西在住。家庭あり、子ども1人。会社員。両親が離婚したのは8歳のとき。父との交流は離婚後ほぼゼロ。Yさんとも面識なし。
- 夫(享年60歳):会社員。10年前にYさんと再婚。マンションを購入して2人暮らし。前妻の子の存在をYさんには「いる」とだけ伝えていたが、詳細は話さなかった。遺言書なし。
夫が亡くなったのは、健康診断の翌日でした。急性心筋梗塞でした。葬儀の準備で頭が真っ白になっていたとき、夫の兄から「Rくんに連絡しないと」と言われて……初めて「ああ、相続人なんだ」と気づきました。
夫からは「前の家族の話はしたくない」と言われていたので、私は名前くらいしか知らなかったんです。突然、35歳の見知らぬ「家族」と向き合うことになりました。
相続財産の内訳 ── マンション3,000万円、預貯金1,000万円
Yさんのご主人が残した財産はシンプルでした。
- 自宅マンション:東京23区内、築15年、3LDK ── 3,000万円(不動産鑑定評価額)
- 預貯金:銀行口座 ── 1,000万円
- 合計:4,000万円
相続税の基礎控除
本ケースの基礎控除額は「3,000万円 + 600万円 × 2人 = 4,200万円」。遺産総額4,000万円は基礎控除内のため、相続税は発生しません。ただし、配偶者の税額軽減(1.6億円まで非課税)があるため、配偶者がいるケースで4,000万円程度なら相続税はほぼ問題になりません。
法定相続分の説明 ── 配偶者1/2、子1/2で各2,000万円
後妻のYさんと前妻の子のRさん。この場合の法定相続分はどうなるんですか?
配偶者と子の相続では、配偶者1/2、子全員で1/2が原則です。本件では子はRさん一人なので、後妻と前妻の子で2分の1ずつになります。
- 遺産総額:4,000万円
- 相続人:配偶者(後妻Y)+ 子1人(前妻の子R)
- 後妻の法定相続分:4,000万円 × 1/2 = 2,000万円
- 前妻の子の法定相続分:4,000万円 × 1/2 = 2,000万円
前妻の子の相続権について
離婚により親権が変わっても、親子関係(実親子関係)は法律上ずっと残ります。前妻の子は、父親が再婚した後に築いた財産も含めて、すべての遺産について法定相続人になります。これは「再婚後の家族」と「前の家族」が相続の場で必ず接点を持つことを意味します。
問題の核心 ── 「面識ゼロの相続人」と現金不足
正直、Rさんがどんな方か全く知らなかったんです。手紙を書こうにも、何から書けばいいのか。「夫の妻です」と名乗るのも、変な感じがして……。
夫の兄を通じて連絡を取ってもらい、最初の面会はファミレスでした。Rさんは思っていたより落ち着いた青年で、「初めまして」と頭を下げてくれたんです。でも、話が相続のことになると、急に空気が変わりました。
父との思い出はほとんどありません。8歳のとき両親が離婚して、それから一度も会っていない。小学校の運動会も、高校の卒業式も、結婚式にも来てくれなかった。私にとっての「父」は、母が一人で育ててくれた中での「いない人」でした。
でも、法律上は「父」なんですよね。私には子どもが生まれたばかりで、教育費もこれからかかる。法律で決まっている2,000万円は、子どものために大切に使わせてもらいます。
このケースの構造的な問題は「現金が1,000万円しかないのに、前妻の子が要求するのは2,000万円」という点です。
後妻のYさんが住み慣れたマンションを守るには、預貯金1,000万円を全額前妻の子に渡し、さらに不足分1,000万円を捻出する必要があります。代償分割を選ぶには、後妻に1,000万円を別に用意する力が必要です。
後妻の主張 ── 「住み慣れた家を失いたくない」
このマンションは、夫と私が10年かけて築いてきた家なんです。リフォームも、家具も、ベランダの花壇も、全部私たち2人で選びました。
60歳で家を失って、賃貸暮らしを始めるのは現実的に厳しい。私はパート勤務だし、貯金も今回の相続のために使い切る予定。このマンションだけは絶対に守りたい──それが私の本音でした。
Yさんの主張には2つの法的論点があります。
1つ目は「配偶者居住権」の活用可能性。2020年4月から施行された制度(民法1028条〜1041条)で、所有権を相続しなくても無償で住み続けられる権利です。
2つ目は代償分割。Yさんがマンションを取得して、Rさんに代償金(現金)を支払う方法です。
配偶者居住権(民法1028条以下)
2020年4月施行の改正民法で導入された制度です。配偶者が亡くなったとき、残された配偶者が一定の要件のもとで自宅に住み続ける権利を取得できます。配偶者居住権の評価額は所有権評価額より低いため、その分だけ他の財産(預貯金など)を多く受け取れるメリットがあります。遺言で指定するか、遺産分割協議で合意するか、家庭裁判所の審判で認めてもらう必要があります。
前妻の子の主張 ── 「法律上の権利を行使する」
Yさんが家に住み続けたいというお気持ちは理解できます。でも、私は「法定相続分の2,000万円」を諦めるつもりはありません。
父は私の人生の大切な時期に何もしてくれなかった。学費も、結婚資金も、孫が生まれたときの援助もなかった。せめて相続の場面では、法律で認められた取り分を受け取りたい。これは私の中での「区切り」でもあるんです。
配偶者居住権?そんな制度があるんですね。でも、それを認めると私の取り分が減ってしまうなら、お断りします。一括の現金で2,000万円を受け取りたい。Yさんがどう工面するかは、Yさんの問題です。
前妻の子の主張には、法的に争いようがない部分があります。法定相続分は「請求すれば100%認められる権利」であり、配偶者居住権の設定も他の相続人の同意がなければ家庭裁判所の審判が必要になります。
そして審判には半年以上かかり、必ず認められる保証もない。Yさんは「審判で争うより、現金で解決して早く終わらせたい」と判断しました。
法的論点 ── 前妻の子の相続権と遺留分
そもそも、夫は遺言書を残せばこの状況を防げたんでしょうか?
大幅に状況を変えられたはずです。ただし、「全部後妻に相続させる」と遺言書に書いても、前妻の子には『遺留分』があるため、完全には防げません。
- 遺産総額:4,000万円
- 子の法定相続分:4,000万円 × 1/2 = 2,000万円
- 子の遺留分:法定相続分の1/2 = 1,000万円
つまり、夫が「全部後妻に」と遺言を書いていれば、Yさんは2,000万円ではなく3,000万円分の財産を確保でき、Rさんへの支払いは1,000万円で済みました。
1,000万円なら預貯金で全額カバーできるので、借金は必要ありませんでした。Yさんがマンションを取得し、預貯金から1,000万円をRさんに渡す──シンプルで、誰も損をしない解決ができたはずなのです。
遺留分(民法1042条)とは?
兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた、最低限の取り分のことです。子の遺留分は法定相続分の1/2、配偶者の遺留分も法定相続分の1/2です。遺言で別の人に多く渡しても、遺留分を侵害された相続人は「遺留分侵害額請求権」を行使できます。遺留分は「請求して初めて発生する権利」であり、放棄も可能です(生前放棄には家庭裁判所の許可が必要)。
解決策の検討 ── 代償分割と借入のリスク
遺言書がなかった場合、Yさんに残された選択肢って何があったんですか?
大きく3つの選択肢がありました。それぞれメリットとデメリットがあります。
- 1. 換価分割:マンションを売却して現金化し、2,000万円ずつ分ける(後妻は家を失う)
- 2. 代償分割(借入):後妻がマンション取得+預貯金1,000万円+借入1,000万円で前妻の子に支払う(家は守れるが借金)
- 3. 共有分割:マンションを共有名義にする(管理・売却に前妻の子の同意が必要、長期的なリスク)
Yさんは1(家を失う)と3(共有のリスク)を避け、2の代償分割(借入)を選びました。60歳でローンを組むのは厳しい条件でしたが、夫の生命保険金1,000万円と、夫の兄弟の保証で銀行から1,000万円の借入に成功しました。
- 月々の返済額:4万円(20年返済、金利1.5%想定)
- 総返済額:1,156万円(利息156万円)
- パート収入と年金で生活費+ローン返済はギリギリ
- 病気・事故などで収入が途絶えれば即座に破綻リスク
- マンションは担保となり、最悪の場合は失う可能性も
交渉の経緯 ── 2年、弁護士同士の応酬
Yさんと前妻の子Rさんの遺産分割協議は、解決まで2年かかりました。時系列で振り返りましょう。
- 1年目・春:夫が急逝。葬儀後、夫の兄を通じてRさんと初接触
- 1年目・初夏:3者面談(Yさん・Rさん・夫の兄)。Rさんが「法定相続分2,000万円」を主張
- 1年目・夏:Yさんが弁護士に相談。代償分割の可能性を探る
- 1年目・秋:マンション鑑定(30万円)。3,000万円と評価される
- 1年目・冬:Rさん側も弁護士をつける。書面でのやり取りに切り替わる
- 2年目・春:銀行への借入相談を開始。複数行に断られた末、夫の兄の保証で1行から借入承認
- 2年目・夏:代償分割案で合意。預貯金1,000万円+借入1,000万円をRさんに支払う
- 2年目・秋:分割協議書作成、登記変更、支払い完了
2年間、本当に長かった。最後の支払いを終えたとき、ホッとしたよりも「ああ、これから20年返済が始まるんだ」と現実が重くのしかかってきました。
Rさんとは、最後の和解の場で軽く会釈をして別れました。それきりです。私にとっては「夫が遺した最後の家族問題」が、こうして終わりました。
結末 ── 後妻が借金1,000万で家を守る
最終的な遺産分割の結果をまとめると、以下のようになりました。
【合計】分配可能額:4,000万円
- マンション:3,000万円
- 預貯金:1,000万円
- 相続税:0円(基礎控除4,200万円内+配偶者の税額軽減)
【個別】各相続人の取得
- 後妻(Yさん):マンション3,000万円を取得
- マンション取得:+3,000万円
- 預貯金は全額前妻の子へ:±0円
- 銀行借入1,000万円を組成、Rさんへ支払い:-1,000万円(負債)
- 純資産:3,000 − 1,000 = +2,000万円
- 弁護士費用・鑑定費用 等で-150万円
- 20年間の借入利息:-156万円
- 前妻の子(Rさん):2,000万円を取得
- 後妻からの代償金:+2,000万円(預貯金1,000万 + 借入分1,000万)
- 弁護士費用:-100万円
家は守りました。でも、60歳から1,000万円の借金返済が始まり、月々4万円ずつパート収入から支払う毎日です。年金が出るまではギリギリ。年金が出ても、今の生活費に毎月のローン返済を上乗せすると、貯金は一切できません。
もし大きな病気をしたら、どうなるんだろう。マンションを売って施設に入るしかないかもしれない。「家を守った」と言えるのは、私が健康でいる間だけなんです。
かかった費用・時間 ── 2年、双方で250万円超
【合計】金銭コスト:250万円 / 期間:2年
- 後妻側 弁護士費用:120万円
- 前妻の子側 弁護士費用:100万円
- マンション鑑定費用:30万円(後妻負担)
- 遺産分割協議書・登記費用:5万円
- その他(戸籍取得・郵送費・交通費):5万円
【個別】誰が支払ったか
- 後妻(Yさん):150万円
- 前妻の子(Rさん):100万円
【非金銭・将来コスト】
- 精神的コスト:2年間の交渉ストレス、面識のない相手との緊張関係
- 20年間の借入利息:156万円
- 老後の家計圧迫:生活費+ローン返済でほぼ余裕なし
【後妻(Yさん)】最終収支:+1,650万円
- マンション取得:+3,000万円
- 銀行借入:-1,000万円(Rさんへの支払い分)
- 相続税:0円
- トラブルコスト:-150万円
- 20年間の借入利息:-156万円
- 差引:3,000 − 1,000 − 150 − 156 = +1,694万円(うち2,000万円相当はマンション資産、現金純資産は実質マイナス)
【前妻の子(Rさん)】最終収支:+1,900万円
- 取得額:+2,000万円
- 相続税:0円
- トラブルコスト:-100万円
- 差引:+1,900万円
こうして数字で並べると、前妻の子は法定相続分通りの取り分を得て、後妻は家を守ったものの借金と老後不安を抱える形になったことがわかります。家を守ったように見えて、実質的には大きなマイナスを背負ったのです。
振り返り・教訓 ── 対策実施なら後妻+2,485万円、差額+835万円
先生、再婚家庭で前妻の子がいるケースはどう備えれば良いんですか?
このケースは「100%遺言書が必要なケース」です。再婚家庭で前妻の子がいる場合、遺言なしで何もしないことは、配偶者にとって最大のリスクになります。
対策1:公正証書遺言で配偶者に手厚く配分
夫が生前に公正証書遺言を作成し、「マンションは妻に」「預貯金も妻に多く」と明記することが最も基本的な対策です。前妻の子には「遺留分1,000万円」のみが残ります。
対策2:配偶者居住権を遺言で指定
2020年から使える配偶者居住権を遺言で明示する方法です。マンションの所有権を前妻の子に渡しつつ、配偶者居住権で後妻が無償で住み続けられます。
- マンション3,000万円のうち、配偶者居住権の評価額を2,000万円とする(妻の余命を考慮)
- 所有権の評価額は1,000万円(負担付き所有権)
- 後妻:配偶者居住権2,000万 + 預貯金500万 = 2,500万円相当
- 前妻の子:マンション所有権1,000万 + 預貯金500万 = 1,500万円(遺留分1,000万を超える)
対策3:生前に前妻の子と関係構築
もう一つ重要なのが、生前のうちに前妻の子と最低限の関係を作っておくことです。完全に没交渉のまま死後に対面すると、心理的な距離が大きすぎて話し合いになりません。
誕生日にメールを送る、年に1回会う、孫の写真を共有する──そんな小さな積み重ねが、相続時の話し合いを「人間的な関係」にする土台を作ります。
対策4:生命保険を活用した代償資金の準備
その他の対策として、生命保険を活用して代償金の原資を準備する方法もあります。受取人を後妻に指定した生命保険の保険金は、遺産分割の対象にならない「みなし相続財産」です。
例えば1,000万円の生命保険に加入していれば、後妻はそれを使って前妻の子への代償金を支払うことができ、借金をする必要がなくなります。
もし対策をすべて行っていたら ── 最終収支シミュレーション
では、対策1〜2を実行していた場合、最終収支がどう変わるか試算してみましょう。
- 夫が公正証書遺言を作成(配偶者居住権を後妻に、所有権は前妻の子に)
- 預貯金1,000万円を後妻と前妻の子で半額ずつに配分
- 遺言があるため調停・追加弁護士費用は不要
【合計】分配可能額:4,000万円(相続税0円・対策費用15万円控除前)
- マンション:3,000万円(配偶者居住権2,000万 + 所有権1,000万)
- 預貯金:1,000万円(後妻500万 + 前妻の子500万)
- 相続税:0円
- 生前対策費用:-15万円(公正証書遺言10万円 + 配偶者居住権の登記5万円)
【個別】各相続人の最終収支
- 後妻(Yさん):+2,485万円相当
- 配偶者居住権:+2,000万円(無償で住み続けられる権利)
- 預貯金:+500万円
- 対策費用:-15万円
- 差引:2,000 + 500 − 15 = +2,485万円相当(借金ゼロ、老後不安なし)
- 前妻の子(Rさん):+1,500万円
- マンション所有権:+1,000万円(妻死亡後に取得可能)
- 預貯金:+500万円
- 差引:+1,500万円(遺留分1,000万円を超える)
- 後妻:実際 +1,694万円(借金あり)→ 対策実施時 +2,485万円相当(差額:+791万円+借金回避)
- 前妻の子:実際 +1,900万円 → 対策実施時 +1,500万円(差額:-400万円)
- 後妻の老後:実際 借金返済20年・生活困窮 → 対策実施時 借金ゼロ・老後安心
- 解決期間:実際 2年 → 対策実施時 申告期限内(10ヶ月以内)でスムーズ
後妻にとっての差額は791万円。さらに何より重要なのは、借金を背負わずに済んだこと、そして老後の経済的不安が大幅に軽減されたことです。生前対策費用はわずか15万円。15万円の遺言と配偶者居住権の指定で、借金1,000万円と20年の不安を回避できたはずです。
前妻の子にとっては400万円の減少ですが、それは「遺留分」の倍以上の取り分です。父との関係性を考えれば、十分受け入れられる範囲のはずです。
注:本シミュレーションについて
上記の金額は概算試算です。配偶者居住権の評価額は配偶者の余命や物件の状況により変わります。また、前妻の子が「遺留分侵害額請求」を行使するかは個別の判断となります。具体的な対策を検討される場合は、必ず弁護士・税理士・司法書士等の専門家にご相談ください。
夫がもう少し早く、「もしもの時」を考えてくれていたら……と何度も思いました。でも、夫は「縁起でもない」と話したがらなかった。私もそれ以上踏み込めなかった。
もし同じような状況の方がこの記事を読んでいるなら、「再婚家庭こそ100%遺言が必要」と強く伝えたいです。配偶者居住権という新しい制度もあります。これは、愛する妻や夫の老後を守るための、最後の優しさです。
参考判例・条文
本記事の論点(前妻の子の相続権・遺留分・配偶者居住権)に関連する代表的な条文:
- 民法第887条(子の相続権): 離婚により親権を失っても親子関係は継続するため、前妻の子は第1順位の相続人として相続権を持つ。後妻の子と法定相続分は同等。
- 民法第1042条(遺留分の帰属及びその割合): 子の遺留分は法定相続分の1/2。「全財産を後妻に」と遺言しても、前妻の子は遺留分侵害額請求で金銭を取得できる。
- 民法第1028条〜第1041条(配偶者居住権): 2020年4月施行。配偶者は被相続人所有の建物に相続開始時に居住していた場合、居住権を取得できる新制度。
※ 詳細は記事末尾の「法的根拠・参照元」ボックスのリンクを参照。
参考判例・条文
本記事の論点(先妻の子と後妻の相続権・遺留分)に関連する代表的な判例・条文:
- 最高裁判所 平成7年7月5日 大法廷決定: 法定相続分の補充的性格と、遺言による相続分指定の優先性を判示。先妻の子と後妻の子の相続分の関係を理解する上で基本となる判例。
- 最高裁判所 平成25年9月4日 大法廷決定: 非嫡出子の相続分を嫡出子と同等とした違憲決定。先妻・後妻の子の間の相続分にも関連する重要判例。
- 民法第900条(法定相続分)
- 民法第1046条(遺留分侵害額の請求)
※ 詳細は記事末尾の「法的根拠・参照元」ボックスのリンクを参照。
まとめ
- 離婚しても「親子関係」は法律上残るため、前妻の子は再婚後の財産も相続できる
- 再婚家庭で配偶者と前の家庭の子がいる場合、遺言なしでは配偶者が圧倒的に不利
- 子の遺留分は法定相続分の1/2。本件なら2,000万→1,000万まで圧縮できる
- 2020年から使える「配偶者居住権」は再婚家庭の最重要対策
- 公正証書遺言+配偶者居住権の組み合わせが、再婚配偶者を守る最強の手段
- 生前のうちに前妻・前夫の子と最低限の関係性を作っておくことも有効
- 相続トラブルは、金銭以上に「老後の経済的安心」を奪う取り返しのつかないリスクを生む
再婚家庭の相続トラブルは、本人同士は仲が良くても、相続の場面で初めて問題が顕在化するのが特徴です。生前は誰も困っていないからこそ、対策が後回しになりがちです。
大切なのは、「再婚した時点で遺言を考える」こと。そして、必要に応じて2020年から始まった配偶者居住権制度の利用も含めて、専門家に相談することです。この記事が、再婚家庭の方々の「最初の一歩」になれば幸いです。
再婚は、人生の新しいスタート。だからこそ、その「終わり」のことも考えておく必要があります。お互いを守るための準備として、遺言と配偶者居住権について、ぜひお近くの専門家にご相談ください。
よくある質問
前妻の子は再婚後の財産も相続できますか?
はい。離婚により親権が変わっても、親子関係(実親子関係)は法律上ずっと残ります。前妻の子は、父親が再婚した後に築いた財産も含めて、すべての遺産について法定相続人になります。
配偶者と子の場合、法定相続分は配偶者1/2、子全員で1/2です。子が一人なら、その子が遺産の1/2を受け取る権利を持ちます。
後妻に住んでいる家を残すにはどうすればいいですか?
最も確実なのは、夫が生前に「公正証書遺言」を作成し、自宅を後妻に相続させる旨を明記することです。さらに2020年4月から「配偶者居住権」が認められ、所有権を子に渡しつつ配偶者が無償で住み続ける権利を残すこともできます。
ただし、前妻の子の遺留分(法定相続分の1/2)は侵害できないため、配分には注意が必要です。
前妻の子と連絡が取れない場合はどうすればいいですか?
戸籍を遡って前妻の子の所在を調べる必要があります。本籍地の役所で戸籍謄本を取得し、附票で現住所を確認します。連絡先が判明したら、まずは丁寧な手紙で経緯を説明し、相続が発生したことと話し合いを希望する旨を伝えます。
直接会うのが難しい場合は、弁護士を介した交渉が有効です。連絡を取らずに遺産分割協議を進めることはできません。
配偶者居住権とは何ですか?
2020年4月施行の改正民法で導入された制度です。配偶者が亡くなった場合、残された配偶者が一定の要件のもとで自宅に住み続ける権利を取得できます。
所有権を子(前妻の子含む)に渡しつつ、配偶者は終身または一定期間にわたって無償で住み続けられます。配偶者居住権の評価額は所有権評価額より低く、その分だけ他の財産を多く受け取れるメリットがあります。
- 民法 第887条・第900条(子の相続権・法定相続分) — 前妻の子が法定相続人となる根拠
- 民法 第1028条以下(配偶者居住権) — 後妻が住み続ける権利の根拠
- 民法 第1042条(遺留分) — 前妻の子の遺留分(法定相続分の1/2)の根拠
- 裁判所「遺産分割調停」手続案内 — 話し合いが決裂した際の家裁手続
- 最高裁判所 平成7年7月5日 大法廷決定
- 最高裁判所 平成25年9月4日 大法廷決定
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