用語分類: 法律用語
法定相続人とは?
配偶者は常に相続人になります。それ以外の人は3つの順位で決まり、第1順位が子、第2順位が直系尊属、第3順位が兄弟姉妹です。先順位の人が1人でもいれば後順位の人は相続人になれません。法定相続分は 配偶者と子で1/2:1/2、配偶者と親で2/3:1/3、配偶者と兄弟姉妹で3/4:1/4です。内縁の配偶者や子の配偶者には相続権がありません。子のいない夫婦で配偶者にすべて渡したい場合は遺言書が必須になります。相続人を確定するには被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が必要で、取り寄せに数週間かかることもあります。
目次
対策
「法定相続人」に直面したとき、または事前に備えるときの基本ステップです。
ステップ 1: 被相続人の連続戸籍を取り寄せ
出生から死亡までのすべての戸籍謄本を本籍地の市区町村から取り寄せ。郵送可、1通450〜750円。遠隔地は2〜4週間。
ステップ 2: 配偶者・子・親・兄弟姉妹を確定
配偶者は常に相続人。子(第1順位)→ 直系尊属(第2順位)→ 兄弟姉妹(第3順位)の順で確定。先順位がいれば後順位はゼロ。
ステップ 3: 本ページ下部の早見表で法定相続分を確認
「相続人の構成」と「各人の取り分」をパターン別に網羅した30種類の組み合わせ表を参照。
ステップ 4: 法定相続情報一覧図を作成(推奨)
法務局へ申請(手数料無料)。一度作れば銀行・登記・税務署の手続きで戸籍束を何度も提出する必要がなくなる。
ステップ 5: 内縁・嫁/婿に渡したい場合は遺言書
内縁配偶者・子の配偶者には相続権がないため、財産を渡したい場合は遺言書(遺贈)が必須。
法定相続人の定義
相続人になれる人は民法で完全に決まっており、感覚や事実上の関係(内縁、子の嫁や婿、お世話になった人など)では相続権は1円も発生しません。配偶者は常に相続人になり(民法890条)、それ以外は次の3順位で決まります。
- 第1順位:子(民法887条)── 子が先に死亡している場合は、孫・ひ孫が代襲相続します。
- 第2順位:直系尊属(父母・祖父母)(民法889条)── 第1順位の人がいない場合に限り相続人になります。
- 第3順位:兄弟姉妹(民法889条)── 第1・第2順位の人がいない場合に限り相続人になります。兄弟姉妹が先に死亡している場合は甥姪までが代襲します。
配偶者は3順位すべてと組み合わせて相続します。法定相続分は配偶者×子=1/2:1/2、配偶者×直系尊属=2/3:1/3、配偶者×兄弟姉妹=3/4:1/4です。同じ順位内(子3人など)は人数で等分します。2013年の最高裁違憲決定により、非嫡出子の相続分も嫡出子と同等になりました。
誤解されやすいポイントと実務上の注意を整理します。
- 内縁の妻(事実婚の配偶者)には相続権がありません(最判昭38・2・22)。必要なら遺言書で対処することになります。
- 子の配偶者(嫁・婿)にも相続権はありません。介護に貢献した嫁が請求できるのは特別寄与料のみです(民法1050条)。
- 養子も実子と同じ相続人になります。ただし特別養子縁組では、実親側の相続権は消滅します。
- 相続人を確定するには、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を全国の本籍地から取り寄せる必要があり、数週間から1か月かかることもあります。法務局の法定相続情報証明制度を使うと、以降の銀行や登記の手続きが大幅に楽になります。
法定相続人が関係する事例
面識のない前妻の子から「法定分2,000万円」を要求──後妻が借金してマンションを守った話
再婚後に父が急逝。後妻と前妻の子(35歳・面識なし)が相続人となり、前妻の子が法定相続分2,000万円を全額請求。後妻はマンション3,000万円を守るために預貯金1,000万円と銀行借入1,000万円で支払い、生活費が困窮。
20年音信不通の弟が相続人に──不在者財産管理人の申立で2年・100万円かかった話
兄弟3人のうち1人が20年以上音信不通。預貯金1,500万円と実家1,000万円を分けるには全員の実印が必要だが、行方不明の相続人がいると遺産分割協議が成立しない。家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申立てるしかなく、予納金100万円・期間2年を費やした件。生前に連絡先を把握し、遺言執行者を指定しておくべきだったケースを解説。
子のいない夫婦の悲劇──夫の兄弟3人に法定分1,500万円を支払った妻の話
子のいない夫婦で夫が急逝。妻と「夫の兄弟3人」が相続人になり、疎遠だった義理の兄弟から法定相続分1/4の分配を要求された。預貯金2,000万円の大半を兄弟に支払い、妻は自宅マンションを守ったが体調を崩す。
相続人パターン別の法定相続分一覧
民法第900条の組み合わせを網羅。配偶者の有無 × 第1〜3順位の血族構成ごとに、各相続人の取り分(割合・端数あり)を示す。
| 相続人の構成 | 配偶者の取り分 | 子の取り分 | 直系尊属の取り分 | 兄弟姉妹の取り分 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 配偶者のみ(子・親・兄弟姉妹なし) | 1(全部) | - | - | - | 全財産が配偶者へ |
| 配偶者 + 子 1 人 | 1/2 | 1/2 | - | - | 民法900条1号 |
| 配偶者 + 子 2 人 | 1/2 | 各 1/4 | - | - | 子は人数で等分 |
| 配偶者 + 子 3 人 | 1/2 | 各 1/6 | - | - | 同上 |
| 配偶者 + 子 4 人 | 1/2 | 各 1/8 | - | - | 同上 |
| 配偶者 + 子 5 人 | 1/2 | 各 1/10 | - | - | 同上 |
| 子のみ 1 人(配偶者なし) | - | 1(全部) | - | - | 単独相続 |
| 子のみ 2 人 | - | 各 1/2 | - | - | 等分 |
| 子のみ 3 人 | - | 各 1/3 | - | - | 等分 |
| 配偶者 + 父母(直系尊属、子なし) | 2/3 | - | 計 1/3(父母で等分なら各 1/6) | - | 民法900条2号 |
| 配偶者 + 父のみ | 2/3 | - | 1/3 | - | 母が既に死亡 |
| 配偶者 + 母のみ | 2/3 | - | 1/3 | - | 父が既に死亡 |
| 配偶者 + 祖父母 1 人(父母とも死亡) | 2/3 | - | 1/3 | - | 代襲ではなく順次承継 |
| 父母のみ(配偶者・子なし) | - | - | 各 1/2 | - | 等分 |
| 父のみ(配偶者・子・母なし) | - | - | 1(全部) | - | 単独 |
| 配偶者 + 兄弟姉妹 1 人(子・親なし) | 3/4 | - | - | 1/4 | 民法900条3号 |
| 配偶者 + 兄弟姉妹 2 人 | 3/4 | - | - | 各 1/8 | 兄弟姉妹は等分 |
| 配偶者 + 兄弟姉妹 3 人 | 3/4 | - | - | 各 1/12 | 同上 |
| 配偶者 + 兄弟姉妹 4 人 | 3/4 | - | - | 各 1/16 | 同上 |
| 兄弟姉妹のみ 1 人 | - | - | - | 1(全部) | 単独 |
| 兄弟姉妹のみ 2 人 | - | - | - | 各 1/2 | 等分 |
| 兄弟姉妹のみ 3 人 | - | - | - | 各 1/3 | 等分 |
| 配偶者 + 子 1 人 + 子の代襲(孫 2 人、子 1 人が既に死亡) | 1/2 | 存命の子 1/4 / 孫 各 1/8 | - | - | 代襲は 子の取り分 1/4 を孫で等分 |
| 配偶者 + 兄弟姉妹 + 兄弟姉妹の代襲(甥姪) | 3/4 | - | - | 存命の兄弟姉妹と甥姪で 1/4 を承継 | 甥姪は親の取り分を等分 |
| 配偶者 + 子 + 子の配偶者 | 1/2 | 1/2(子の配偶者は相続権なし) | - | - | 嫁・婿には相続権なし |
| 配偶者 + 内縁配偶者 | 1(法律婚配偶者のみ) | - | - | - | 内縁配偶者には相続権なし(最判昭38・2・22) |
| 養子 1 人 + 実子 1 人 + 配偶者 | 1/2 | 養子 1/4 / 実子 1/4 | - | - | 養子も実子と同じ相続分 |
| 特別養子 1 人(実親の相続権は消滅) | (実親の相続では)相続権なし | - | - | - | 民法817条の9 |
| 離婚後の前妻 + 現妻 | 現妻のみが相続人 | - | - | - | 離婚で配偶者の相続権は消滅 |
| 相続放棄した子 1 人 + 子 1 人 + 配偶者 | 1/2 | 放棄した子は最初から相続人でなかったとみなされ、孫への代襲も発生しない。残る子 1 人が 1/2 | - | - | 民法939条 |
注意: ① 非嫡出子も嫡出子と同じ相続分(最判平25・9・4 違憲決定後)。② 同順位の人数で等分(民法900条4号)。③ 数字は計算しやすい例で示しています。実際の遺産分割協議では、すべて協議で自由に決められます(法定相続分は協議が整わない場合の基準)。
出典: 民法第900条、最判昭38・2・22、最判平25・9・4 等(取得・整理 2026-04-13)
よくある誤解、質問
- 誤解1. 「内縁の妻も相続人になる」は誤り。法律婚の配偶者のみ。
- 正しくは ── 該当箇所の本文を参照してください。
- 誤解2. 「子の配偶者(嫁・婿)が相続する」は誤り。代襲相続するのは「子の子」(孫)であって、子の配偶者は対象外。
- 正しくは ── 該当箇所の本文を参照してください。
- 誤解3. 「相続放棄しても代襲相続は発生する」は誤り。相続放棄では代襲は起きない(欠格・廃除なら起きる)。
- 正しくは ── 該当箇所の本文を参照してください。
- Q1. 子がいない夫婦で夫が亡くなったら誰が相続人?
- A. 妻と、夫の親(健在なら)。両親もすでに亡くなっていれば、妻と夫の兄弟姉妹(さらに兄弟姉妹も亡くなっていれば甥姪まで代襲)。妻だけにすべて相続させたいなら遺言書が必須です。
- Q2. 養子も法定相続人になる?
- A. なります。普通養子は実親と養親の両方の相続人になります。特別養子は実親との親族関係が消滅するため、養親のみの相続人。なお、相続税の基礎控除計算では養子の数に上限あり(実子なし2人、実子あり1人)。
- Q3. 相続人の確定にはどんな書類が必要?
- A. 被相続人の出生〜死亡までの連続した戸籍(または法定相続情報一覧図)、相続人全員の現在戸籍。遠隔地の戸籍取り寄せに数週間かかることもあります。法務局の「法定相続情報証明制度」を利用すると以後の手続きが楽になります。
根拠条文
- 民法 第887条(子・代襲相続) (e-Gov 法令検索)
- 民法 第889条(直系尊属・兄弟姉妹) (e-Gov 法令検索)
- 民法 第890条(配偶者) (e-Gov 法令検索)
- 民法 第900条(法定相続分) (e-Gov 法令検索)